よく飛ぶ 紙飛行機への道

【第11回】連載バックナンバー調査の実施と追加報告

よく飛ぶ 紙飛行機への道

二宮式紙飛行機の研究 その後

筆者は、この本稿を執筆開始した後も、紙飛行機の書籍を収集し続けている。

子供の科学は毎月購読しているから、新型機が月に1機増加することになる。しかしながら、2012年11月、雑誌 子供の科学の1990年代のバックナンバーが、かなりまとめて手に入ったことから、所蔵リストの空白をかなり埋められることになった。また、未知の機体を 21機入手することが出来た。

これにて筆者の所蔵する二宮式を含めた紙飛行機型紙は、2057機となった。所蔵する二宮式紙飛行機の機種としては、570 機種となった。

この570機種の内訳を、機体の特徴によって簡単に紹介すると以下のようになる。

 競技用機:199機種(34.9%)
 プロフィール機:118機種(20.7%)
 軽飛行機:114機種(20.0%)
 先尾翼機:32機種( 5.6%)
 無尾翼機:35機種( 6.1%)
 デルタ翼機:27機種( 4.7%)
 割りばし機:48機種( 8.4%)
 三角胴機:24機種( 4.2%)
 変形機(無尾翼機含む):80機種(14.2%)
 複葉機:23機種( 4.0%)
 その他:40機種( 7.0%)

今回の雑誌バックナンバーの分析によって、新たに確認できた事実等をここに報告したい。

最古のN-ナンバー機

二宮先生の設計番号に当たるN-ナンバーについて、以前本稿ではN-78競技用機がもっとも若い番号であると書いたが、今回の再調査により子供の科学1975年7月号に掲載された「低翼軽飛行機 N-28」が、はるかに若い番号であることが判明した。
(2013/4/10訂正:再確認したところ、正しくはN-28→N-284 であり、子供の科学掲載時の誤植であることが判明した。 N-284はよく飛ぶ紙飛行機集 第4集に収録されている)

また、子供の科学の連載で初めてN-ナンバーが記載されたのは1974年12月号「小型無尾翼機N-273」からであるらしいことが明らかになった。これは 「子供の科学別冊よく飛ぶ紙飛行機集」でN-ナンバーが記載されるようになったのが1975年発行の第3集からである事実と年代的に符合する。

しかし、筆者の調査では、子供の科学1973年12月号~1974年11月号の間の11機についても、第3集以降の別冊や単行本と比較することにより、N- ナンバーが明らかになっている。 第3集以降では、雑誌子供の科学掲載時に公開されなかったN-ナンバーがあえて記載された可能性があり、筆者の「連載初期の機体にもN-ナンバーはあるは ず」という推測の更なる傍証となっている。

ホワイトウイングスのN-ナンバー

今回の追加調査において、新たにホワイトウイングス版のN-ナンバーが明らかになった。
 英語版 Vol.6 旅客機の歴史シリーズSimple Plane 1 → N-1108
 英語版 Vol.6 旅客機の歴史シリーズRacer 538 Wren → N-1227
 英語版 Vol.6 旅客機の歴史シリーズRacer 539 Hawk → N-1250
 英語版 Vol.6 旅客機の歴史シリーズRacer 540 Crane → N- 1251
 英語版 Vol.7 Pioneer of Flight Light Plane Jet Trainer → N-1282
上記は型紙形状が全く同一であり、疑いの余地は無い。

1991年は割りばし飛行機の年

1990年代の子供の科学連載について、筆者は107機を確認しているが、そのうち割りばし飛行機(棒胴機)は18機(16.8%)であった。これは現在確認でき ている子供の科学連載全体での割合、8.4%に比べると2倍になっている。これは1991年に割りばし飛行機が7回、1995年に3回、1996年に4回 登場していることが影響している。

特に1991年は割りばし飛行機の特集年とも言えるが、その殆どが翌1992年に発行された単行本「二宮康明のわりばし機10機選」に掲載されている。

90年代前半はホワイトウイングスとの同形機が多い

1992年~1993年にかけてはジェット戦闘機の歴史シリーズと題して、戦闘機のプロフィール機が掲載されているが、その多くが「ホワイトウイングス版15機セット Vol.5 戦闘機の歴史シリーズ」に同形機を見かける。

1994年~1995年初頭には旅客機の歴史シリーズが掲載され、「ホワイトウイングス版15機セット Vol.6 旅客機の歴史シリーズ」に同形機が複数見かけられる。 要するに1992年~1995年は、ホワイトウイングス版との同形機が多いことが特徴的と言えるだろう。雑誌子供の科学に連載され、後に単行本として発行される他に、玩具店でホワイトウイングスとしても入手できるようになった、華やいだ時代である。

90年代後半

1997年はセイルプレーンシリーズと題して、競技用機が7回掲載されているが、ホワイトウイングス版に同形機がほぼ無いのは、1995年までとは対照的である。

1998年は競技用機が5回掲載されているものの、他のタイプの機体も掲載されており、特徴が無いと言うよりは、掲載内容のバランスが取れた年である。

1999 年には突然、「スカイカブⅡ」をベースにした(縮小した主翼を用いた)紙飛行機が8回も掲載されている。まさに「スカイカブⅡバリエーション」の年であ る。それにしても1年間ほぼ毎月のように主翼形が同じというのは、当時の子供達としてはどうだったのだろう? 胴体側面形や垂直尾翼が異なれば、気にならなかったのだろうか?

「戻ってくる紙飛行機」

(※2019年9月7日:90年代ではないがここに追記した)
連載46周年のころ二宮式紙飛行機には異色のシリーズもあった。「近くのあまり広くない公園でも飛ばして楽しめる紙飛行機」である。二宮式競技用機の滞空性能は非常に高く、ゆっくり旋回するように調整しないと、一辺数百メートルあるような広い公園でも外へ飛び出してしまいかねない(実際筆者はそうやって機体を何度か見失っている)。公園であってもそのような建造物や樹木の無い広い空間は数少ない。そこで交通機関を利用せず、近くの公園で気軽に楽しめる紙飛行機が企画されたのだ。テニスコート二面分程度の敷地で旋回飛行が楽しめるように、特に設計された機体群が子供の科学2014年4月から2015年3月号まで掲載された。実際の機体の特徴としては競技用機の外形を基本として、主翼面積とキャンバーを大きくすることで滑空速度を落とし、ゆっくり旋回飛行できるようにしたものだ。ゴムカタパルトは張力を弱くするか、手投げ発進が向いているとも言える。上記の特徴のおかげであまり高度を取りすぎることなく、1~2回ゆっくり小さめに旋回して自分の近くに着地するというわけだ。これらの機体は後に単行本「新10機選5 二宮康明の紙飛行機集 狭くても楽しめる旋回用機」に特集された。

以上のように、二宮式紙飛行機の連載内容は年によって特色があるので楽しく、さすが歴史を感じさせるものである。

(参考:誠文堂新光社「よく飛ぶ紙飛行機集」および雑誌「子供の科学」、AG社発売のホワイトウイングス)