よく飛ぶ 紙飛行機への道

【第15回】 ホワイトウイングス版競技用機について②

よく飛ぶ 紙飛行機への道

Racer 532~556

Racer 532から後の機体は、原則として金属フックを廃した機体が続く。またプレカットで無い15機セットの型紙が相当数含まれている。更に「バルサシリーズ No.3 」8機セットでは、金属フックとバルサフックのRacerが2機ずつ混在していることが分かる。以下に列挙してみる。
セット名を見出しとし、機体名を列挙する。

英語版 Vol.5 戦闘機の歴史シリーズ(紙フック15機セット)
 Racer 532 Dragonfly :トンボ(矩形テーパー翼 普通型尾翼)
 Racer 533 Sparrowhawk :ハイタカ(楕円型MOST翼1段上反角 普通型尾翼)
 Racer 534 Heron :サギ(楕円型MOST翼2段上反角 普通型尾翼)

バルサシリーズ Vol.3
 Racer 535 :White Lark :ハジロコウテンシ(矩形テーパー翼 普通型尾翼 バルサフック)

スペシャルパフォーマーズ
 Racer 536 Swallow :ツバメ(バルサフック・プレカット 楕円型MOST翼1段上反角、双尾翼)

バルサシリーズ Vol.3
 Racer 537 Gull :カモメ(バルサフック 翼端上半角の楕円主翼 普通型尾翼)

英語版 Vol.6 旅客機の歴史シリーズ(紙フック15機セット 下記3機はおもり不要)
 Racer 538 Wren :ミソサザイ (矩形テーパー翼1段上反角 T尾翼)
 Racer 539 Hawk :タカ(楕円型MOST翼2段上反角 普通型尾翼)
 Racer 540 Crane :ツル(楕円型MOST翼2段上反角 下付き垂直尾翼)

バルサシリーズ Vol.3
 Racer 541 :(MOST楕円翼1段上反角 双垂直尾翼 金属フック)
 Racer 542 :(セミ・ボックス型主翼 翼端上反角 普通型尾翼 金属フック)
 ※セミボックス型主翼:主翼と裏打ち部品の間にすき間を作ってねじれ強度を上げる主翼形式。
  接着剤乾燥後にキャンバー調整はできない。


バルサ6機種セット 滞空競技用機(バルサフック・プレカット)
 Racer 543 Macaw :コンゴウインコ(楕円テーパー翼 普通型尾翼)
 Racer 544 Snipe :タシギ(楕円テーパー翼 双垂直尾翼)

スペシャルパフォーマーズ
 Racer 545 Kingbird :タイランチョウ(バルサフック・プレカット 矩形MOST翼1段上反角 普通型尾翼)

英語版 Vol.8 軽飛行機シリーズ(紙フック15機セット)
 Racer 546 Canary :カナリア(矩形テーパー翼 普通型尾翼)
 Racer 547 Skylark :ヒバリ(楕円テーパー翼 双垂直尾翼)
 Racer 548 Sunbird :タイヨウチョウ(翼端上半角 下付き垂直尾翼)

バルサ6機種セット 滞空競技用機(バルサフック・プレカット)
 Racer 549 Swift :アマツバメ(矩形テーパー翼の普通型)
 Racer 550 Sky Cub Ⅲ :スカイカブⅢ(楕円テーパー翼の組み立てやすい基本型)

スペシャルパフォーマーズ
 Racer 551 Kittiwake :ミツユビカモメ(バルサフック・プレカット 楕円型MOST翼2段上反角 普通型尾翼)

滞空競技用機特選集 バルサタイプ(バルサフック・プレカット)
 Racer 552 (MOST楕円翼2段上反角 普通型尾翼)
 Racer 553 (MOST楕円翼2段上反角 普通型尾翼 552の88%縮小版で上昇重視)
 Racer 554 (2段上反角MOST翼・双垂直尾翼)
 Racer 555 (矩形MOST翼 普通型尾翼)

バルサタイプ 競技用機 3機種セット(バルサフック・プレカット)
 Racer 556 Sky Rabbit :スカイラビット (スカイカブの双垂直尾翼型)
 Racer 590 :(ハンドランチ用バルサ胴大型機:2機セット・非プレカット)

以上である。プレカットの有無等、様々な仕様の機体が交互に登場するため、ここから何かの傾向を読み取るのは困難である。

なお、535、537は初期の商品であるバルサシリーズ Vol.3に含まれているのに、その間の番号のRacer 536 Swallow :ツバメが、後期の商品といえるスペシャルパフォーマーズに含まれるのは奇妙である。536の発売が遅れた理由は何なのだろう?
また、Racer 541は、後に改良型のRacer 541sとして発売された。

消えたRacer ?

さてここで、あることに気付く。557~589が欠番ではないかと。
この「34機の空白」は何を意味するのか?
Racerの中には、発売時に機体番号を付与されていない機体が存在する。以下に列挙する。

 Racer Twin Comet :ツインコメット(バルサ胴金属フックの単品売り双尾翼機)
 Racer Sky Cub Ⅱ :スカイカブⅡ(スカイカブから金属フックを廃止)
 Racer Sky Cub Ⅳ :スカイカブⅣ (簡単組み立て型。主翼取付方法を変更)
 Racer Sky Cub 95 :スカイカブ95 (スカイカブの小型版)
 Racer Sky Cub T :スカイカブT (下つき垂直尾翼の小旋回型)
 Racer Spruce Goose:お洒落なガチョウ
 Racer Cardinal:猩々紅冠鳥(ショウジョウコウカンチョウ)
 Racer Mockingbird:マネシツグミ
(※2019年8月31日更新:初期パッケージの表記からツインコメットは510であった。英語版セットの表記から、箱の裏面に表示された機体愛称のSpruce Gooseは514 Gooseのことで(型紙には514と表記)、Cardinalは518、Mockingbirdは516であった。またSky CubⅡは英語版Science of Experimental Flight 8機セットの型紙にのみ、Racer 508Aと明記されていることを確認した。)

しかし、これらに3桁の番号が「実はある」としても、あと26機分の空白が残る。
い や実は、上記に述べた仕様の変遷と、Racer501~556までの間に欠番が無いことを考えると、初期に発売されたTwin Cometは番号の振りようがないし、Sky Cub ⅡはRacer 508(Sky Cub)と550(Sky CubⅢ)の間の番号でなくてはならず、これも機体番号の付与は不可能なのだ。これは508を95%に縮小したSky Cub 95でも同様である。つまり、空白は29機分あるのだ。

スカイカブⅣ、スカイカブTは、AG社最後期のバルサ胴機体であるので、上記の空白に属する可能性はある。

また、Spruce Goose、Cardinal、Mockingbirdの3機種は、「EEddie Bauer Sport Wings by Whitewings」という海外で限定販売されたと思われる15機セットに含まれるのだが、著作権表示が1991年であること、パッケージ写真を観察す ると、3機共におもり不要の紙フック機に見えることから、この空白に属する可能性はある。

この推測が正しければ、空白は24機分ということになるのだが。

(※以下、上記を2019年8月31日更新)
しかし、これら3機種に3桁の機体番号が「実はある」としても、あと31機分の空白が残る。上記に述べた仕様の変遷と、Racer501~556までの間に欠番が無いことを考えると、Racer 508を95%に縮小したSky Cub 95は、Racer 508(Sky Cub)と550(Sky CubⅢ)の間の番号でなくてはならず、機体番号の付与は不可能なのだ。あるいは本機の機体番号は”Racer 508 95” である可能性もある。

一方、スカイカブⅣ、スカイカブTは、AG社最後期のバルサ胴機体であるので、上記の空白(557~589)に属する可能性はある。特にスカイカブⅣについては、スカイカブⅡが508Aであるものの、スカイカブⅢが508Bではなく550であるため、スカイカブⅣがRacer 508Cである可能性は無いだろう。


手元の書籍やパッケージの広告、ネット検索など、可能な限りの探索を試みたが、筆者はこの空白について、これ以上何の情報も見出せないでいる。

一方、Racer590は、AOZORAブランドの最初の新型機である。旧AG社取り扱いの最後期までに、「未発売に終わった31 24機が存在する」とでも想像するしかない。
Racerの機体番号を順に追っていくことで、二宮式紙飛行機について、またひとつ大きな謎が浮上したのである。

2019年現在のRacer

そして現在入手可能なホワイトウイングスのRacerは、以下の5機種である。

 Racer 550 Sky Cub Ⅲ
 Racer Sky Cub Ⅳ
 Racer 530s
 Racer 554
 Racer 590
 Racer 541s

しかし過去を振り返れば、1980年に発売以来、ホワイトウイングスのRacerは、通算65機種を数えるに至っている。プレカット化などの仕様変更を含めれば、それ以上のバリエーションとなる。何しろRacer501の発売以来、40年も続くシリーズなのだ。

この美しい61 65機種のRacerシリーズは、「紙飛行機の安全性、組み立てやすさ、そしてグローバルな普及への取り組み」という、日本の紙飛行機の現代史を体現しているのである。

(参考:日本紙飛行機協会ホームページ、誠文堂新光社「よく飛ぶ紙飛行機集」、AG社発売のホワイトウイングス)